日本政府がロシアの市場経済改革支援の一環として設置した「日本センター」で、「日露関係発展には北方領土問題の解決よりビジネスを優先すべきだ」とする内容の授業がロシアの若者相手に行われている実態が明らかになった。日本が運営資金を全面負担しながら、領土問題に関するロシア政府の立場を宣伝する場に逆利用されているわけだ。
問題の授業はモスクワ大学構内の日本センターで今年2月ごろ、ロシア人の女性教官が自分で作成した日本人とロシア人の会話例文を読み上げ、受講者たちに口頭で日本語、ロシア語いずれかに翻訳させる内容だった。
この会話文ではロシア人が「両国間の交流と四島の問題は別々に検討する方がいい」として、解決が困難な領土問題の棚上げと合弁企業設立を勧め、シベリアの石油開発、極東やカムチャツカの観光開発への日本の投資の必要性などを持ち出している。この主張に対し日本人も「その通りだ」とロシア人に賛同する発言をしている。
この教官は同じ内容の授業を何回も繰り返していたとされるが、センターの日本人所長は授業内容を事前にチェックしていなかったとみられる。
領土交渉はいま、ロシア側が「四島の主権はロシアにあり、これは国際法で確認されている」などと歴史的事実をねじ曲げた主張に固執し、暗礁に乗り上げている。こんな時こそ、日本センターは戦争直後にスターリンが四島を不法占拠した事実をロシア人に執拗(しつよう)に説くべきなのに、現実は逆だ。
ソ連崩壊後の1994年、モスクワ(2カ所)やサンクトペテルブルク、ウラジオストクなどロシア国内7カ所に設置した日本センターでは将来のロシア経済を担う人材育成を主目的に、経営関連講座、日本語講座などの活動を続けてきた。所長にはロシア駐在の経験豊富な元商社マンらが就任、これまでの受講者は3万人を超え、ここ数年は多額の人件費を含め毎年平均7億円前後もの予算が費やされてきた。
しかし、ロシア経済は石油の生産・輸出で活況を呈しており、日本センター内外では「存在意義が薄れた」「役割は終わった」などの声も上がっている。政府はこのさい、センターの存廃問題自体を含め、早急にその活動の全面的な見直しを断行すべきだ。(7・31産経「主張」)


by gymnasticsteam5
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